建築構造設計べんりねっと
目が点!確認申請

・どこにも明文化されていない「ルール」や「内規」で指導される。
・設計者の意図や設計思想を聞いてくれない。
・審査する個々人(ましてや行政単位)によって見解が違う。

 こんな申請者(設計者)の不満を解決するために日本ERIが建築基準法の運用について見解 をまとめた『目からウロコの確認申請』と言う本がありますが、このページは、私が確認申請で受けたまさに目が点、耳を疑うような指摘を書いたものです。



この半年の間の「?」な指摘を幾つか。   2008.01.20UP
灰色幽霊さんより
@昨年の6/20以降層間変形角の計算法が変わりました。

 以前は梁芯-梁芯間の構造階高をスラブ-スラブ間の一般階、もしくは逆梁等の特殊な事情の場合はスラブ-梁天端間で算出する事になりました(みかん本の294-295)。
 ところが「一部下がっている地中梁天端(G.L-130)から上部階の床(2SL)までを階高として計算しなさい。」との指摘がありました。

わずか13pかもしれないですけど、緩和してどうする?


Aまた6/20以降構造物の崩壊形に関して設計者の所見などを述べる機会が増えたのですが(というよりも述べさ せられます)、一階がピロティ構造でしたので、みかん本の技術基準に従い、なおかつ1/50まで押し切った解析を 行った結果、崩壊形は一階柱の曲げによる層崩壊と位置付けました。

ところが、「メカニズムは1階の曲げによる層崩壊形成であるが、最上階の(耐力)壁にはヒンジも崩壊も見当たらない。その階は未崩壊なのにどうしてDsが決まるのか。根拠が不足している。」との指摘がありました。

どうしてメカニズム(崩壊)みとめて崩壊は認めないの?


B設計者の考え、位置付け一つでいくらでもその意味を変えてしまいそうですが、「土間コンクリート」に目地を入れてはならない。」との指摘もありました。

土間コンの計算が必要ならまだ良かったかも。


C指摘の中に「軒高さ25mの建築物に対して)この建築物の基礎は直接基礎である事から地盤は良好であると言える。設計者は第一種地盤を第二種地盤として計算をしているが、この手法は不適切であると考えられる。」

厳しい方を採用(第一種地盤だと略算ではRtが1.0を下回るので第二種とした)して不適切なモデルだそうです。 おな、この後第一種で問題ない、と言い切りました。

そりゃ、ねぇ。満足しますって。


なお、上述の指摘は適合判定からの質疑でした。 まだまだ現場は混乱しているのかもしれません。


計算書にコメント 平成18年○○月○○日   2006.12.22UP
匿名希望さんより
  東京都某区で鉄骨造2階建ての事務所の設計をした時の事です。 某民間審査機関に確認申請を出した所、こんな指摘があがってきました。

『杭の水平力に対する検討方法の根拠を示して下さい。』

(※杭は某メーカーの鋼管杭を使用しており、杭の水平抵抗と杭頭曲げを考慮した地中梁の検討は手計算でやっていました。)

 この件について電話で内容を確認した時のやり取りです。

私   :「検討方法の根拠って、別に普通の検討方法ですが。」
審査担当: 「何の基準に従って検討をしているのかと言う事なんですが。」
私   :「何の基準って、建築学会の基礎構造設計指針にも載っていますし。」
審査担当: 「それでは、“建築学会の基礎構造設計指針による。”と計算書に書いて下さい。それともう一点、良いですか、小梁B1のスターラップの検討が無いのですが。」
私   : 「コンクリート断面だけでせん断がOKなので問題無いじゃないですか。」
審査担当: 「それでは、その旨も計算書に書いて頂けますか。」
私 : 「いい加減にして下さいよ。何で一々、そのな事を書かなくてはならないのですか。 計算書を見れば判るでしょ。そのな事は書きませんよ。」

 結局、意匠屋さんが書いたみたいですが、こんな無駄な事をさせないで欲しいです。


木造3階建て混構造に壁式構造基準適用? 平成18年○○月○○日   2006.11.15UP
匿名さんより
 木3混構造1階RC造(壁式)の設計を行ったときの事。
設計は「3階建混構造住宅の構造設計の手引き」に沿って構造計算をしました。 壁厚は180mmは欲しいところですが、意匠納まりから150mmとしていました。もちろん 壁量は十分です。
確認申請を某民間検査機関に出した所、こんな指摘があがってきました。

指摘事項「1階が壁式構造なので建築学会の壁式構造基準に沿って設計するように。 3階建ての1階の壁厚は180mm以上」


私  :「WRC基準を木造混構造にまるまる適用するのですか?」
検査員: 「そうです。」
私  : 「それはおかしいじゃないですか。今回は木造混構造で「・・・手引き」に沿って設計しているんですが 、壁厚も・・・」
(根拠を探しているのかペラペラと基準書か資料をめくる音が電話口から聞こえてくる・・・)
検査員: 「しかし1階がRC壁式構造の場合は3階建ての1階部分の壁式基準の壁厚を適用してください。」
私  : 「階数と1階の構造だけで壁厚を決められるのはおかしいじゃないですか。壁式基準は全層RC造で 木造の場合と重量がまるで違うじゃないですか。」
検査員: 「そうですが、3階建ての1階が壁式構造の場合、壁式基準に沿って・・」
私  : 「だから階数だけで指導しないでください!こっちは構造設計をやっているだ!」(怒もーど)
(電話口からペラペラとなにかめくる音が激しい(笑))
検査員: 「そうですね。確かに重量はちがいますが・・・」
私  : 「・・・いつもそんな指導してるんですか?」(怒もーど)
検査員: 「ちょっと中で協議しますので」

 しばらくして、その検査員の言い分は間違っていたとの内容と陳謝のお言葉をたいへん ご丁寧な口調でいただきました。応用力のない検査員には往生します。


L型鋼水平ブレースにターンバックル? 平成○○年○○月○○日   2006.11.04UP
 東京都某市にてショッピングセンターの設計を行った時の事です。 屋上の設備架台があり、鉄骨ブレース構造(1層)で設計をしていました。

 設備の機械重量が重く、丸鋼では足りなかったため、水平ブレースにはL型鋼(アングル)を使用して いた所、こんな指摘があがってきました。

行政: 「水平ブレースはターンバックルを付けて下さい。」
私 :「はあ?水平ブレース は丸鋼では無く、L型鋼(アングル)使っているのですが。」
行政: 「L型鋼(アングル)でもターンバックルで締めないとたわんで地震の時に効かないじゃないか。」
私 : 「3m×3mくらいのグリッドでは大してたわみませんよ。それにどうやって L型鋼(アングル)を付けるのですか?耐力が足りないからL型鋼(アングル)使っているのに ターンバックルを付けて断面を下げたら意味が無いじゃないですか?」
行政: 「どうやってターンバックルを付けるかは、設計者が考える事だ。耐力が足りなければ 数を増やせばいいじゃないか。」
私 : 「無茶言わないで下さいよ。東京都の構造設計指針のL型鋼(アングル)ブレースの図表にだって、 ターンバックルなんてついて無いじゃないですか。それじゃ、東京都の指針が間違っているって 事ですか?」
行政: 「そうだとしたら東京都の指針も間違っている。」
私 : 「・・・」

 結局、自重によるたわみ量を出して、伸びの分を考慮しても問題無いという検討書を出して許可を 貰ったが、それにしても東京都の構造設計指針が間違っているなんて言い切っちゃうとは 滅茶苦茶だ。


標準貫入試験の見方 平成○○年○○月○○日
 神奈川某市にてRC造6階建てのマンションの確認申請を出した時の事です。基礎はGL−2.5mからN値50以上となる砂礫層が確認されていたため、この層を支持層とした直接基礎としていました。
 地耐力が十分に足りるのは明らかなのですが、一応計算書はN値50の数値から地耐力の計算をしていました。

行政:「N値50で計算していますが、基礎下のN値は26になるので訂正をして下さい。」
私 :「ボーリング試験でGL−2.5mから砂礫層が確認されていて、その層のN値は明らかにN値50以上となっているのでN値50で計算しているのですが。」
行政:「N値のグラフを良く見てください。基礎下端はN値2とN値50の中間になるのでN値26でしょう。」
私 :「この線は試験をした深さの数値を繋げただけでその間のN値を現しているグラフじゃないですよね。それでは例えばGL−3.0mまでシルト層だとしたらGL−2.75mの深さではN値26にして良いんですか?」

行政:「そういう事になるね。あんた、そんな事も判らないでそれでも設計屋さん?」
私 :「それは○○市としての見解ですか?」(怒り口調で)

 窓口でこのようなやり取りをしていると見かねた別の担当官が出てきて、 苦し紛れに以下のように言いました。
「うちでは同じ層でも標準貫入試験で確認されていない深さでは、そのN値 で計算しないようにお願いをしているんですよ。今回は、Dfを見込めば必要地耐力 以上となるのでそうしてくれませんか。」
 中間のN値の評価についての回答を貰っていないぞと思いつつも、これ以上 ケンカしてもしょうがないと思い、今回はそれで処理する事にしました。


地震地域係数の指導 平成○○年○○月○○日
 福岡県某市にて確認申請を出した時の事です。福岡県は建築基準法上は地域係数0.8となりますが、特に低減は行わないで設計していました。

行政:「地域係数は、0.8で設計をして下さい。」
私 :「地域係数1.0で設計しているのですから、別に問題ないですよね。」
行政:「うーん。でもうちは地域係数0.8で指導しているので。ちょっと上司を相談してみます。」

 結局、地域係数1.0で設計している事に対するコメントを書いてくれませんかとの回答が来た。それにしても耐力を落とす指導をするなんて不思議な行政だ。